喧騒を避ける北鎌倉の隠れ家:「北鎌倉古民家ミュージアム」の深い魅力

北鎌倉といえば、明月院、円覚寺、建長寺といった名だたる古刹が有名です。しかし、これらの名所は観光シーズンになると驚くほどの混雑に見舞われ、せっかく静かな北鎌倉の風情を堪能しに来たにもかかわらず、「芋洗い」状態になってしまうのは避けたいところです。また、ただ単に道を歩いて鶴岡八幡宮方面へ向かっても、休憩できるお店や見どころが少なく、物足りなく感じることがあります。
そんな時にこそおすすめしたいのが、比較的空いていて、しかしその魅力は深い「北鎌倉古民家ミュージアム」です。駅のすぐそばという立地ゆえに、多くの観光客にスルーされがちな、この穴場スポットの魅力をじっくりとご紹介します。
駅チカゆえにスルーされがちな立地の妙
北鎌倉古民家ミュージアムがどこにあるのか、ピンと来ない方も多いかもしれません。なぜなら、この施設は横須賀線の北鎌倉駅の改札を出て、本当にわずか歩いた、まさに「駅のすぐそば」にあるからです。
北鎌倉の観光スポットのほとんどは駅から少し歩く必要があるため、改札を出た直後にいきなり現れる、この「何の建物かよくわからないけれど拝観料がかかる施設」は、多くの人々が目的地へと急ぐあまり、無意識のうちに通り過ぎてしまう傾向があります。しかし、このスルーされがちな立地こそが、静かに鑑賞できる「穴場」としての魅力を生んでいるのです。
風情ある庭園:紫陽花とトトロの森のようなオブジェ
拝観料を払い中へ入ると、まず広がるのは、手入れが行き届いた広大な日本庭園です。この庭園こそが、このミュージアムの大きな見どころの一つです。
特に紫陽花の季節は格別です。庭園には鉢植えの紫陽花が多数展示されており、個人的な感想としては、明月院のような名所に行くよりも、ここで多種多様な紫陽花をゆっくりと鑑賞するほうが、よほど満足感が高いと感じました。
庭の散策を進めると、素焼きの可愛らしい置物や人形がオブジェとしてさりげなく飾られていることに気づきます。その雰囲気は、まるでスタジオジブリの「トトロの森」の世界に迷い込んだような感覚を覚えます。実は、庭をじっくりと見て回る人が少ないため、これらの人形の存在に気づかないまま帰ってしまう入館者も多いかもしれません。しかし、これらは立派な芸術作品であり、じっくりと鑑賞しない手はありません。

もちろん、庭園ですから季節ごとの植物が目を楽しませてくれます。植えられているのは、山野草のような素朴で地味ながら美しい花が多いようです。私は特に苔が好きなので、花よりも地面に目をやり、「この苔の這い方は見事だ」「雑草ではなく苔で庭の表面を覆うのは、どれほどの職人芸だろうか」などと、その維持管理の難しさに思いを馳せながら見とれてしまいます。
古民家で開催される多彩な企画展
北鎌倉古民家ミュージアムと名乗るだけあって、定期的に絵画や工芸品の展覧会が開催されているのも大きな特徴です。私が行った時には、金魚の絵を描くイラストレーターさんの展覧会が開催されていました。
金魚をこんなにもドアップで、そして迫力のあるタッチで描いた作品を見たことがなく、圧倒されました。金魚のヒレは複雑でふにゃふにゃとしているため、絵にするのは大変難しいはずです。その繊細さと、画面いっぱいに描かれた迫力に魅了されました。
この古民家は二階建てになっており、私が行った時は2階で金魚アートの展覧会、1階では「星野富弘さん」の展覧会が開催されていました。私は長年、JAF Mateの会誌の表紙で星野さんの詩画に触れてきたため、とても懐かしい気持ちになりました。しかし、作品に添えられた詩のようなメッセージと、その絵を一緒に見ると、口に筆を咥えて描かれたとは信じられないほどの、作者の並々ならぬ思いが伝わってきて、胸が熱くなりました。
その日は、他にも多くの作家さんの作品が同時に展示されていたようで、古民家の空間全体がアートで満たされていました。展示に合わせて関連グッズの販売も行われており、私はそこで小さなドライバー機能付きのボールペンを購入したのですが、残念ながら今どこにやったか思い出せません。
最後に:デートにも最適な隠れ家スポット
今回ご紹介した北鎌倉古民家ミュージアムは、訪れる前に公式サイトなどで企画展の情報を調べておくことをおすすめします。展覧会の内容によって、楽しみ方が大きく変わるからです。
また、店員さんにお話を伺ったところ、紫陽花の季節には紫陽花の鉢植えの販売もしているとのことでした。
主要な観光スポットの喧騒を避け、静かに文化や芸術、そして美しい庭園を堪能できるこの北鎌倉古民家ミュージアムは、まさに知る人ぞ知る「隠れ家的なスポット」です。特に、人混みを避けて二人きりの時間を大切にしたいカップルの「秘密のデート」にもぴったりかもしれません。北鎌倉を訪れる際には、ぜひ一度、駅前のこの穴場を覗いてみることを強くおすすめします。

