JA準組合員カード獲得への長く険しい道のり:1%割引を求めて

自宅の近くにJAの農産物直売所があり、新鮮な野菜を求めて足しげく通っています。レジで会計をするとき、店員さんから決まって聞かれるのが「組合員カードはお持ちですか?」という一言。聞けば、組合員カードがあれば購入金額がわずかながら割引になるというのです。
「せっかくなら割引の恩恵を受けてみよう」と、私はJAの準組合員になることを決意しました。しかし、この決断が、まさか長く険しい道のりの始まりになるとは、その時の私は知る由もありませんでした。単にカードを作るだけと甘く見ていた私を待ち受けていた、JAならではの手続きの壁と時間差。その奮闘記を、これからじっくりとご紹介します。
準組合員への第一歩:口座開設と「銀行」JAの顔
組合員カードを手に入れるため、私は最寄りのJA支店へと向かいました。直売所での割引を期待していた私にとって、支店の雰囲気は予想外でした。そこは、直売所ののんびりした雰囲気とは対照的な、一般の銀行と変わらない「バンク」の顔を強く持っていました。
窓口で「組合員カードを作りたい」と伝えると、まず言われたのは「組合員になるには、JAバンクの口座開設が必須」という条件。銀行と同じように、印鑑を用意し、パスワードを決め、口座開設の申請書に署名・捺印する手続きを行いました。
さらに、組合員カードは組合員へのサービスであり、まずは「準組合員」になる必要があるとのこと。ここでいう正規の「組合員」は主に農業従事者を指し、私たち消費者はそれに準ずる「準組合員」として仲間に入れてもらう形です。
そして、準組合員になるためのもう一つの重要なステップが、「1万円の拠出金」をJAバンク口座に入金することでした。私は言われるがまま、申請したばかりの口座へすぐに1万円を入金しました。この拠出金は、組合を辞める際に返還されるものですが、実質的な「入会金」のようなものです。
また、JA支店の営業時間が平日の午後3時までと、一般の銀行よりも早く終わる点も印象的でした。農業に関する多岐にわたる事業を展開しているJAですが、そのコア業務には「銀行(信用事業)」が深く根付いていることを、この営業時間から改めて感じさせられました。
届かない組合員カード:誤算と長い審査期間
口座開設と1万円の入金を終え、あとは組合員カードが送られてくるのを待つばかり。一般のカードと同じように、すぐに届くものだと私は思っていました。
それから約一週間後、自宅に郵送されてきたのは、申請したJAバンクのキャッシュカードだけでした。期待していた組合員カードは、どこにも見当たりません。欲しかったのは割引の恩恵を受けられる組合員カードだったため、私の淡い期待はあっさりと裏切られることになりました。口座を作り、拠出金を入れれば、すぐに準組合員と認められカードがもらえる、という私の考えは甘かったのです
引き落としの確認と準組合員承認:2週間が示す壁の高さ
組合員カードが届かないことに疑問を感じ、JA支店に確認の電話をしました。すると、さらに手続きが必要だという事実が判明します。
「口座から1万円をJAが引き落としたことの確認が取れてから、組合員カードを送付します」という説明を受けたのです。つまり、ただ入金するだけでなく、JA側で拠出金として処理するまでの「タイムラグ」が必要だったのです。
結局、組合員カードが手元に届くのは申し込みから約2週間後になる、とのことでした。翌日配送や即日発行といったサービスに慣れている現代人としては、「なぜそんなに時間がかかるのか」と少々戸惑いを覚えました。しかし、これはJAという組織の仕組みを考えれば、仕方がないことなのかもしれません。
念願のカード獲得、しかし潜む「もう一つの壁」
申し込みからちょうど2週間が経った日、ついに念願の組合員カードが郵送されてきました。同封されていた書類には、「JAバンク口座から1万円の拠出金が引き落とせたため、準組合員となることを承認します」と書かれており、これでようやく私も「農業の応援団」の一員となったのです。
しかし、これで全てが終わりではありませんでした。実は、この組合員カードを維持するためには、「JAバンク口座の残高が1万円以下になると、別途口座管理料が徴収される」という最低残高制約があったのです。つまり、準組合員カードを保持し続けるためには、拠出金1万円に加えて、口座に常に1万円以上の残高を入れておく必要があるということです。結果として、組合員カードを手に入れるためには、合計2万円をJAに入れる必要があるという計算になります。
もちろん、この2万円は拠出金(預かり金)と預金なので、準組合員を辞めれば返ってくるお金です。
すべては1%の割引のために
この長く険しい道を乗り越えて手に入れた組合員カード。私の地域では、直売所でこのカードを提示することで、購入金額の1%が割引になるサービスです。
元手として2万円(拠出金1万円+最低預金1万円)をJAに預けているわけですから、この割引の元を取るには、単純計算で200万円分(20,000円÷0.01)の買い物をしなければなりません。気が遠くなるような金額ですが、地元の新鮮な食材を応援する意味も込めて、私は今日もJA直売所で買い物をするのです。このカードは、単なる割引券ではなく、私が「農業の応援団」の一員である証なのです。

