名機を蘇らせる!フィルムカメラを「デジタル化」する夢のアダプタ I'm Back の全貌

かつて日本のカメラメーカーは、フィルムカメラの時代において、その卓越した技術力とデザイン性、機能性で世界市場を席巻していました。しかし、現在、写真撮影の主役がスマートフォンに移り、その勢いは見る影もありません。これは大変残念なことです。日本メーカーだけでなく、ライカに代表されるメカニカル機構が秀逸な海外のフィルムカメラも世に多く存在しますが、それらのオールドカメラを現代において使用するには、フィルムの手配や現像など、多くの不便が伴います。

「自分が愛するオールドカメラで写真を撮りたい。しかし、その結果はデジタルデータ(JPEGなど)としてSNSに手軽にアップしたい」。このような、フィルムカメラの持つ魅力とデジタルの利便性の両方を求めるサイレントマイノリティの声に応えるために誕生したのが、「I'm back35」という革新的なガジェットです。

I'm back35:フィルムカメラ・デジカメ化アダプタの仕組み

このガジェットは、フィルム式のオールドカメラの裏蓋を外し、代わりに専用のアダプタを装着することで、カメラで写した光景を画像データとして記録し、デジカメのように使えるようにする製品です。

もともとはKickStarterのクラウドファンディングプロジェクトとしてスタートしましたが、その反響の大きさから、現在では継続的に製品を販売するショッピングサイト「Imback.eu」として運営されています。

I'm back35とI'm back Filmの2種類のアダプタ

このサイトでは、主に以下の2種類のフィルムカメラ用アダプタが販売されています。

1. I'm back35(初代モデル)

I'm back35の仕組みは、カメラのレンズから入った映像を、まずアダプタ内部のPLD(半透明の拡散板)に投影し、その拡散された映像をCCDセンサーで記録するというものです。これは、一眼レフカメラで光学ファインダーを覗く際、レンズからの画像をフォーカシングスクリーンに投影してピントを確認する仕組みに似ています。ファインダー用の画像をそのままデジタル記録する機構と考えると、その構造が理解しやすいでしょう。

2. I'm back Film(進化版)

こちらは、カメラ内部のフィルムロールがあった位置にCCDセンサーの板が直接つながるような形でセットされ、文字通りフィルムと同じ位置で画像を取り込む方式を採用しています。これは、本物のデジカメと同じ方式です。I'm back35では、間接的に画像を記録するため、高精細な撮影や厳密なピント合わせが難しい場合があったのに対し、I'm back Filmは、これらの問題を解決し、完全なデジカメ化を目指して進化させたキットと言えます。

撮影体験と開発者の情熱

私はこのI'm back35とI'm back Filmの両方を持っていますが、個人的には、写り込みに独特の粗さやレトロ感が残るI'm back35で撮った写真の方が好みです。

なぜなら、超高画質でクリアな写真を撮りたいのであれば、最新のデジタル一眼レフや高機能なスマホカメラを使えば良いからです。わざわざ古いオールドカメラを持ち出して撮影する行為には、単なる記録写真を超えた「雰囲気」を求める意図があります。I'm back35の生み出す若干粗い、レトロな画質こそが、そのオールドカメラの持つ個性や、当時の雰囲気を呼び起こしてくれるように感じるのです。

この画期的なプロジェクトの実態は、スイスを拠点とする小規模なベンチャー企業であり、サミュエル氏とフィリッポ氏という二人のコアメンバーによって、開発、販売、サポートが行われています。

私は幸運にも、新宿でこの二人と実際に会い、ビアガーデンでビールを飲みながら1時間ほど語り合う機会がありました。二人とも、フィルムカメラに対するマニアックな情熱を持ち、同時に新しいテクノロジーでその可能性を広げようと常にチャレンジし続けているナイスガイでした。

しかし、彼らの組織は非常に少ないスタッフで運営されている超零細企業であるため、サポート体制が十分でないこともあります。その点については、Facebookに専門のユーザーグループがあり、そこで質問すれば、ユーザーや開発者から回答を得ることが可能です。私自身は、このサイトから追加注文を何度もクレジットカード決済で行っていますが、これまでに大きなトラブルはなく、国際便で比較的早く注文した品物が届いています。海外ベンチャー企業からの直接購入となるため、基本的には自己責任となりますが、サミュエルやフィリッポの真面目な人柄を考えれば、個別の交渉を粘り強く行えば、案外うまくいくケースも多いでしょう。

オールドカメラに「現役復帰」を

最近のスマートフォンの写真は、実際よりも「美しく」写ることが多いです。しかし、実際より綺麗に写るということは、内部で過度な画像処理が施され、目の前で見た光景とは異なる「合成写真」を見ているとも言えます。本来、カメラで写真を綺麗に撮るということは大変難しく、明るさ、角度、露出、シャッタースピードなど、多くの要素を経験によって学び、熟練して初めて人に見せられる写真が撮れるものです。

もし、かつて使っていた古いフィルムカメラに深い思い入れがあり、それを再び現役として使いたいと願っている方、あるいは最近になってフィルムカメラに興味を持ち、本格的な撮影の練習をしたいが、現像の手間を省きたいと思っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ「Imback.eu」で、お好みのカメラアダプタを選んでみてはいかがでしょうか。愛機にデジタルの息吹を吹き込み、新たなカメラライフをスタートさせる絶好の機会です。