マイナンバーカード免許証への挑戦と立ちはだかった「壁」

2025年、運転免許証の更新時期を迎えた私は、大きな選択を迫られました。それは、健康保険証のマイナンバーカードへの統一が進む流れを受け、運転免許証もまたマイナンバーカードに統合する「マイナンバーカード免許証」を選択するかどうかです。今年から免許更新の選択肢として、以下の二者択一、または両方持ちが可能になったと通知に記載されていました。
- 従来の普通のカード型免許証
- マイナンバーカード免許証
時代はデジタル化へと舵を切っています。保険証の動きを見れば、免許証もマイナカードに統合するのが合理的と判断し、私も新時代の波に乗るべく「マイナンバーカード免許証のみ」での更新に挑戦しました。しかし、その道のりにはいくつかの予想外の「ハードル」が存在しました。私の体験談を共有することで、これから統合を検討される方の参考になれば幸いです。
ハードル1:突然の「予約必須」システム導入
まず、更新手続きの案内をよく読むと、「本年度から原則として予約が必須」という新たなルールが導入されていることがわかりました。急ぎ予約サイトを確認しましたが、運転免許試験場の予約可能日程は随分と先まで埋まっている様子でした。
そこで、比較的空いているかもしれないと期待して、即日発行が可能な最寄りの警察署を予約サイトで探しました。しかし、ここで奇妙な事態に直面します。予約サイトで警察署を選択しようとしても、なぜかボタンを押しても何も表示されないのです。私は「警察署はまだオンライン予約に対応していない」と勝手に判断し、予約なしで直接警察署へ向かうことにしました。
ところが、警察署の窓口で待っていたのは、「予約済みの人が優先」という事実でした。「あれ、予約できるんだ」と初めてそこで認識。おそらく電話での予約も受け付けていたのでしょう。幸い、その日は待ち時間が少なく、約10分ほどで予約なしでも受け付けてもらうことができましたが、突然のシステム変更には戸惑いを覚えたので、この予約の段階で躓く方が今後たくさんでるのではと思いました。
ハードル2:「本当に一つでいいのか?」という執拗な確認
いよいよ受付の順番が回ってきました。私は迷わず「マイナンバーカード免許証のみでの更新をお願いします」と申し出ました。すると、窓口の担当者の方は、まるで「危険な選択」をしているかのように怪訝そうな顔つきになり、矢継ぎ早に確認をしてきたのです。
- 「従来のカード型免許証との2個持ちでなくて本当にいいんですか?」
- 「マイナンバーカードの免許証情報は消えるリスクがありますが大丈夫ですか?」
まるで「マイナンバーカードのみの運用は危険だから止めるべきだ」というメッセージを必死に送ってきているかのようでした。一瞬怯みましたが、保険証の統合が進む状況で、免許証情報の統合だけが突出してリスクが高いとは考えにくいと判断し、「いいえ、マイナンバーカード免許証のみで結構です」と、信念をもって押し通しました。この強い念押しは、新しい制度に対する現場の戸惑いの表れかもしれませんね。
ハードル3:免許証用の写真撮影は省略できない
私がマイナンバーカード免許証を選択した理由の一つに、「免許更新時の指名手配犯のような無残な写真を持ち歩きたくない」という切実な思いがありました。マイナンバーカードは既に公的な写真が登録されているため、この面倒な写真撮影のステップが省略できると期待していたのです。運転免許試験場や警察署で撮影してもらう写真は、私だけでなく、多くの人が人に見せるのをためらうほどの出来栄えになっていることが少なくありませんよね。
しかし、実際のところ、マイナンバーカード免許証への更新でも、新たな顔写真の撮影は必要でした。
理由を尋ねると、マイナンバーカード免許証というものは、住所、氏名、免許証番号といった情報に加えて、免許証用の写真の情報もマイナンバーカードのICチップ内に記憶させる方式だからだということでした。結局、指名手配犯のような写真撮影は今回も行われましたが、その写真はICチップ内での情報としてのみ保存されるため、物理的なカード表面に写真が印刷されることはありませんとのこと。結果として「マイナンバーカードが免許証になる」という当初の目的は達成されました。ICチップ内に保存された情報内容の確認用コピーが渡されるため、写真自体は持ち歩かずに済むことになり一件落着です。
実際の運用の仕方と情報消失のリスク
マイナンバーカード免許証を携帯することで、実際にどのような場面で使うことになるのでしょうか。運転免許証を見せる主な場面は、「本人確認の証拠提示」と「検問などでの警察官による確認」の2つです。
本人確認はマイナンバーカードが元々その役割を担うので問題ありません。警察官による確認については、警察側ではマイナンバーカードのIC情報から運転免許証情報を読み取る専用端末が既に配備されているため、「免許証を見せてください」と言われた際には、単にマイナンバーカードを提示すれば良いということでした。これなら従来型免許証と同じく、常に携帯していれば問題ありません。
また、自分で免許証の内容を確認したい場合は、「マイナ免許証読み取りアプリ」を利用し、マイナンバーカードをスキャンすることで、ICチップ内の情報を個人でも閲覧可能です。自分で免許証の有効期限を確認したい時などに役立ちますが、そもそも手続きの最後にICチップの登録内容を印刷した紙を渡されるため、それを保管しておけば有効期限の確認は事足ります。
最後に、窓口で強く懸念された「情報が消えるリスク」についてですが、通常の使用でICチップの情報が自然に消えることはまず考えられません。過去に事故が起きた事例では、「マイナンバーカード自体の更新」の際に、職員が誤って免許証情報を引き継ぎ忘れるという人為的ミスでした。
この問題を解消するため、お役所内でお達しが出されており、さらに令和7年9月1日以降は、マイナンバーカードの更新時に「マイナ免許証等継続利用」の手続きをオンライン申請時に行うことで、自動的に免許情報が引き継がれるようにシステムが改善されています。万が一、情報が引き継がれなかった場合でも、運転免許試験場か警察署で再発行手続きを行えば再記録は可能です。システムの改善が進んだ現在では、情報が消えるリスクは実質的に解消されたと考えて良いでしょう。新時代の利便性を享受するため、この新しい免許証の形は今後主流になっていくに違いありません。皆さんもご自分の免許更新の際には勇気をもって「マイナ免許証のみの更新でお願いします」と言って見てください。

